天野月子 銀猫
逸らさず見ていてよ
わたしの写真が灰になるまで
喉が焼けて掠れるまで
シャッター切って死なせて
氷張りの家
燻る暖炉 息を吹いた
まだ火は消えない かすかに音を立てる
何を燃やそう カーテンも花も跡形もない
冷えた四肢は 重ねて寄せるだけじゃ足りない
逸らさず見ていてよ
わたしの写真が灰になるまで
過去と今をゼロに戻し わたしをわたしで葬る
あなたを温めて 埃に塗れた銀色の猫
喉が焼けて掠れるまで
シャッター切って死なせて
あなたの写したわたしは 白くはにかんでる
まだ何色へと染まるのかさえ知らず
炎の中 捩れる顔が浮かんできえる
窪み落ちた記憶の言葉 放り投げては
逸らさず見ていてよ
わたしの写真が灰になるまで
開いた穴を塞ぐように わたしはダイヤを葬る
あなたを温めて 埃に塗れた銀色の猫
身体中に刻みつけた 刻印ごと愛して
すべて燃やそう あなたの頬を照らせるように
立ち上った 煙や煤が目にしみても
逸らさず見ていてよ
わたしの写真が灰になるまで
過去と今をゼロに戻し わたしをわたしで葬る
あなたを温めて 埃に塗れた銀色の猫
喉が焼けて掠れるまで
シャッター切って死なせて