ラヴェル - 亡き王女のためのパヴァーヌ
ピアノ:辻井伸行
「亡き王女のためのパヴァーヌ」原題:Pavane pour une infante défunte)は、
フランスの作曲家モーリス・ラヴェルが1899年に作曲したピアノ曲。
この曲はパリ音楽院在学中に作曲した初期を代表する傑作であり、
ラヴェルの代表曲の1つと言える。
諸説あるが、ラヴェルがルーヴル美術館を訪れた時にあった、
17世紀スペインの宮廷画家ディエゴ・ベラスケスが描いた
マルガリータ王女の肖像画からインスピレーションを得て作曲した、とされる。
「亡き王女」という題名はフランス語でinfante défunteとなり、
言葉の韻を踏む遊びから命名された。
ラヴェルによるとこの題名は「亡くなった王女の葬送の哀歌」ではなく、
「昔、スペインの宮廷で小さな王女が踊ったような舞曲(パヴァーヌ)」だとしている。
1902年、リカルド・ビニェスにより初演された。
曲はト長調で4分の4拍子、速度記号はラン(Lent, 四分音符=54)である
(後年、ラヴェル自身が録音した演奏により、54-70と幅が持たされている)。
2つのエピソードを挟んだ小ロンド形式(単純ロンド形式)を取り、
A-B-A-C-Aという構成をしている。
掛留音(コード変更を跨ぐような旋律音)を多用した旋律は
亡き王女への断ち切れぬ想いを表現している。
優雅でラヴェルらしい繊細さを持つ美しい小品であり、
ピアノ版、ラヴェル自身の編曲による管弦楽版の他にも、
多くの編曲者によりピアノと独奏楽器のデュオ、弦楽合奏など様々に編曲され、
コンサート、リサイタルの曲目やアンコールとしてしばし取り上げられる。
晩年、ラヴェルが自動車事故により記憶障害が進行してしまった際、
この曲を聴いて「この曲はとても素晴らしい。誰が書いた曲だろう。」と言ったという逸話もある。
Maurice Ravel - Pavane pour une Infante défunte
Pf:Nobuyuki Tsujii